不動産会社が行う価格査定の方法とは
居住用不動産の場合
家の所有者が自宅の売却をしたいと考えるときには、まず不動産会社に売却可能価格の査定を依頼します。提示される金額は「現時点で家を売却したら、いくらで売却できるか」という売却可能価格を算出する作業ですが、不動産の種類によって査定方法が異なります。
そのうち、居住用不動産(マンションや一戸建て住宅など)という種類の不動産の場合には、取引事例比較法という方法で査定が行われます。
取引事例比較法とは、不動産売買市場において発生した取引事例をもとに、事情を補正し、時期の修正を行い、さらに地域要因や個別要因を比較分析することで価格を査定する方法です。取引事例比較法は、マンションや一戸建て住宅以外にも、事業用の店舗や事務所の査定にも用いられることがあります。
投資用不動産の場合
区分所有マンションや一戸建て住宅などの家を賃貸に出している場合は、投資用不動産とみなされます。そして、収益還元法という方法で売却可能価格を査定されます。
収益還元法とは、不動産の投資家が不動産の収益性に着目して、その不動産から得られる金額を現在価値に割引して算出する方法です。直接還元法とディスカウントキャッシュフロー法に分けられ、投資用の住宅を査定する場合のほかに、オフィスビルの売却可能価格を査定する場合にも用いられる方法です。
区分所有マンションの査定価格を決める要因とは
階数が高くなるほど高く売ることが可能
居住用不動産として、区分所有マンションの売却可能価格の査定を不動産会社に依頼する場合には、取引事例比較法によって査定価格が算出されます。ただし区分所有マンションの場合、不動産市場で認識されている取引価格は、基準階付近の価格を示しています。
例えば20階建てのマンションの場合、10階部分が基準階となります。一般的には基準階よりも階数が高くなればなるほど、基準階価格よりも査定価格は高くなり、基準階よりも階数が低くなればなるほど査定価格は低くなります。
実際のマンション売買においても、タワーマンション高層階の住戸は高い金額で取引されています。さらにタワーマンション低層階の住戸は、比較的低い金額で取引されています。
最上階の角部屋は、マンションのなかではもっとも査定価格が高くなり、高く売ることが可能となります。査定される区分所有マンションにルーフバルコニーや専用庭がついていたり、東向きなのか南向きなのかといった方位、眺望や日照条件なども売却可能価格を決める大きな要因となります。
居住していたタワーマンションの高層階の住戸を、好景気の時期に売却すると多額の譲渡益が発生する可能性が高まります。そして多額の所得税や住民税といった税金を支払う義務が生じます。
ただし所定の要件を満たしていれば、譲渡益から3,000万円まで差し引くことができる「3,000万円特別控除の特例」や、3,000万円以上の譲渡益が出た場合に税金の課税を繰り延べられる「特定の居住用財産の買い換え特例」といった税金面の優遇措置を受けることが可能です。
高級住宅地の低層マンション
一方、高級住宅地にある低層分譲マンションについては、高さよりも住環境が重視されるため、方位・眺望・共用部分・ルーフバルコニー・専用庭などの充実度が売却可能価格を形成する要素となります。住環境が優れている物件ほど査定価格は高くなり、高い金額で売ることが可能となります。
収益性マンション
所有者が第三者と賃貸借契約を締結して貸し出した状態で、区分所有マンションを売却する場合には、投資用不動産として売却可能価格が査定されます。この場合、収益還元法を用いて査定されることになります。
査定の第一のポイントは、収益性です。賃料など年間収益の金額が第一のポイントとなります。この年間収益額を期待利回りで割り戻すことで、売却可能価格を算出することができます。
例えば年間の家賃収入が200万円で、1年間の期待利回りが10%であれば、この区分所有マンションの査定価格は2,000万円となります。高い賃料収入を長年にわたって得られる見込みがある区分所有マンションであれば、高く売ることが可能となるのです。
査定の第二のポイントは建物の構造です。建物は構造ごとに法定耐用年数が定められており、住宅用の鉄筋コンクリート造であれば47年間、重量鉄骨造であれば34年間、アパートや一戸建て住宅といった木造の家は、法定耐用年数が22年となっています。
耐用年数は、残存期間による減価償却費や金融機関からの不動産投資ローンの借入期間、建物や室内設備の修繕費等、キャッシュフローにおいて重要な意味を持っています。
そして第三のポイントが、建物の遵法性です。建物の遵法性は、検査済証の有無によって確認することができます。検査済証とは、建物完成後に行政が完了検査を行い、建築基準関連規定に適合していることが確認できた場合に発行される証明書です。買主の資金調達に影響し、取引価格を左右することになります。
一戸建て住宅の査定価格を決める要因とは
一戸建て住宅の建物価格については、法定耐用年数の残存期間で決まります。新築一戸建て住宅で延床面積が約100平方メートルの場合、1,500万円から1,800万円の査定価格となります。
そして木造住宅の場合は法定耐用年数が22年と定められていますから、中古の一戸建て住宅の場合は、法定耐用年数(22年)から築年数を差し引いて残存価格を算出します。築年数が10年で、延床面積が約100平方メートルの場合、残存期間が12年となるため約820万円となります。
土地の査定価格を決める要因とは
土地価格には、最終消費者価格と産業消費者価格があります。最終消費者価格とは、宅地分譲や分譲マンションなど最終消費者(一般の個人)が購入する価格のことで、一般的にエンド価格といいます。
一方、産業消費者価格とは、最終消費者への販売を目的にして、事業用地として不動産開発業者が仕入れる価格のことで業者価格といいます。
売却可能価格を算出するために不動産会社に査定を依頼する土地が「エンド価格なのか、業者価格なのか」によって、その土地価格は大きく異なることになります。その判断基準となるのが、規模と買主の属性です。
例えば、敷地100平方メートル程度の一戸建て住宅が立ち並ぶ住宅街に、600平方メートル程度の更地が存在する場合、この更地は業者価格で査定されることになる公算が大きいです。
理由としては、周辺の一戸建て住宅の敷地が100平方メートルであるにもかかわらず、敷地600平方メートルの更地を一括購入して自分の住宅を建設する個人が現れることは想定しにくいことが挙げられます。
このため、600平方メートルの敷地を6分割し、6区画ある敷地100平方メートルの一戸建て住宅を、個人に対して分譲する不動産開発業者が、想定される最適な買主となるのです。
そして、エンド価格が3.3平方メートルあたり50万円である場合、業者価格は40万円程度に査定されます。また、600平方メートルの敷地内に開発道路(生活道路)を敷設する必要がある場合は、この道路に供する部分は非分譲となるため、道路面積が敷地全体に占める割合について、査定価格が減価されることになります。
さらに土地が斜面地である場合には、宅地造営工事が必要になったり、古家が残存して解体撤去が必要な場合には、これらの費用は査定価格を引き下げる要素となります。