
がたーん!
大きな音と共に、僕は左手に強烈な痛みを感じた。
見ると、僕の左手は台車に挟まれていた。
僕はホームセンターでアルバイトをしており、そのホームセンターでは、台車を折りたたんで別の台車に積むのが当たり前だった。
その「台車を積んだ台車」を引いていたところ、積んでいた台車が僕の手の上に倒れてきたというわけだ。
慌てて台車を起こして左手を引き抜いたが、じんじんというしびれるような痛みが薬指と小指を支配している。
かなりの痛みだったのに、小心者の僕はそれをすぐに上司に報告しなかった。
「手袋をすればバレないだろう」と思い、手袋をはめて作業したが、少し関節を曲げるだけで激痛が世界新を出した時のきのウサイン・ボルトのように走りまくる状況。
観念して社長に報告しつつ手袋を外すと、手袋の中は血だらけになっていた。
驚いた店長に病院に連れて行ってもらったところ、左手の小指と薬指が「骨折」しているとのこと。
こうして、僕は人生初の「労災保険」にお世話になることになった・・・。
労働中にケガした場合、労災保険が下ります。
労災保険は労働者の権利であり、該当するのであれば、必ず給付を申請する必要があります。
ここでクイズです。
日雇いバイトの場合、労災保険は受けられるのでしょうか?
僕は長期アルバイトだったので、すぐさま店長が勤務中に病院に連れて行ってくれ、労災保険の手続きをしてくれました。
当然、僕が勤めていたホームセンターから労災保険が給付されました。
しかし、1日だけの日雇いバイトでも、労災保険は受けられるのでしょうか?
この記事では、「日雇いバイトでは労災保険の給付を受けることができるのか」について解説します。
あわせて、実際に労働災害が起こってしまった場合の申請手順についても解説します。
フルキャストの日雇いバイトでも労災は受けられるの?
まず最初に、この疑問を解消してから先に進みましょう。
「フルキャストの日雇いバイトは労災保険を受けられるの?」
Yes,you can!
たとえ日雇いであっても、雇用関係が発生しているならば、必ず労災保険を受けられます。
ここで大事なのは、相手がちゃんとその義務を果たそうとするかどうかなのであって、労災保険を受ける権利自体は確実に発生しているのです。
そもそも労災が適用となるケースは?
大前提として押さえておきたいのは、労災が適用されるケースについてです。
労働中に起こった災害に加えて、、通勤中に起こった災害も労働災害とみなされます。
通勤手当の有無にかかわらず、通勤は労働のために時間と労力を費やす行為だからです。
労働中、及び通勤中の災害は労災とみなされる!
こんな時はどうなの?日雇いバイトの労災アレコレ

従業員も少ないし、なんかいろいろ適当そうな会社なんだけど・・・

関係ありません。
どんなに小さな会社でも(たとえ個人事業主であっても)、従業員に対しては労災保険を給付する義務があります。

ケガしたのは自分の不注意なのに、もらうのが申し訳ない・・・

関係ありません。
というか、ちゃんと労災保険を給付しないと、やばいのは「給付しなかった雇用者」の方です。
労働者に対して不正を行ったという事実が発覚すれば、最悪その会社、潰れます。
会社のためにも、きっちり労災保険を申請しましょう。

会社から、日雇いバイトは労災保険適用外だって言われた

「労災保険適用外の労働災害」なんてありえません。
それは単に会社がお金と信用を失いたくなくて、駄々をこねてるだけです。
1歳半のおこちゃまレベルの駄々っ子です。
出せる出せないの問題ではなく、絶対に出さなければいけないのですから、きっちり申請しましょう。

このケースは労働災害とは呼べないって・・・

それを判断するのは会社ではありません。
労働基準監督署です。
会社や作業員が独断で「これは労災ではない!」と決めることはできません。

会社が加入手続きを行っていなかったから、今回はできないっぽい・・・

ところがどっこい!(死語)
そんな時でも、労働者には労災保険の給付申請ができるのだ。

正規雇用とは違って、給付額は減るらしい。

労災保険の給付内容は、雇用形態によって変わることはありません。
というわけで・・・。
労働者の立場が正社員だろうが派遣社員だろうが日雇いバイトであろうが、とにかく労働災害なら労災保険をもらえる!
以上!
日雇いバイトでも労災保険は受けられる!
参考:【フルキャスト】社会保険ってどれくらい引かれるの?加入したくない場合は?
フルキャストで労災保険の適用外となるケースとは?
さて、「日雇いバイトは労災が受けられない」という呪縛は解けたでしょうか。
前章で「日雇いバイトでも労災保険は受けられる!」と散々力説しておきながら、この章では「労災保険の適用外となるケース」について見ていきます(爆)
前章で主張したかったのは「日雇いバイトも正社員も、労災保険においては同等の権利を持っている」ということです。
この章の主張は「日雇いバイト・正社員関係なく、次の場合は労災保険が適用されないケースがあるよ」というものなので、決して内容は矛盾しません。
証明終了。Q.E.D。
適用外となるケース1:休憩時間やお昼休み等に起こった災害
休憩時間やお昼休みなど、労働を中断している時に起こった災害の場合、労働災害と認められず、労災保険の適用外となるケースがあります。
「休憩中にタバコを吸っていたらやけどした」
「お昼休み中にお弁当を食べていたら喉を詰まらせた」
「スマホの充電器が爆発してケガをした」
などなど(例えが適当ですみません)。
休憩中のみならず、労働時間内なのにスマホをいじっていたらスマホが爆発した(!?)といったケースも、労災適用外となる可能性が高いです。
ただし、休憩時間中であっても、
「工場の機材が倒れてきてケガをした」
「老朽化した会社の階段を昇降していたら、踏み抜いてケガをした」
などなど、会社の設備管理不行き届きによる災害の場合、労災保険が認められる場合があります。
適用外となるケース2:通勤を中断・逸脱中の災害
通勤中に災害が起こり、労災保険を受けるケースがあります。これを「通勤災害」と呼びます。
ただし、通勤途中に買い物をしたり、飲みに行ったり、パチンコに行ったりなど、通勤から「逸脱」した行為や、通勤を「中断」する行為中に災害が起こる場合があります。
このような行為を「逸脱」「中断」と呼びますが、通勤の逸脱・中断中に起こった災害は労災保険の適用外となるケースがあります。
ただし、ちょっとした買い物や用を足すぐらいであれば、通勤中とみなされる場合があるので、何事も状況を説明し、判断してもらうのが一番です。
判断に困ったら労働基準監督署に聞く
労災認定は基本的に労働基準監督署、通称「労基署」のお仕事ですので、労災かどうか判断がつかない場合は、とりあえず申請書を提出し、労基署に判断してもらいましょう。
労災保険を申請する手順
この章では労災保険を申請する手順をざっくりと解説します。
一般的には、会社が代わりにすべて手続きしてくれるケースが多いですが、日雇いバイトだとどうなるかわかりません。
会社の人に「どっちがやりますか?」と聞いてみましょう。
会社がやってくれる場合、会社にすべて投げっぱなしにせず、進捗をまめに確認するようにしましょう。
1.病院に行く
まず、病院に行って治療を受けます。
治療を受けるのは「労災病院」「労災指定医療機関」が絶対におすすめ。
労災であることを伝えれば、無料で治療が受けられます。
それ以外の病院だと、一度自分で治療費を立て替えなければならないので、治療費が高額だと家計が圧迫されてしまいます。
既に健康保険で支払ってしまった場合は?
労災が適用されるとはつゆ知らず、既に健康保険で支払ってしまった場合でも、労災保険を申請することができます。
支払った治療費を病院と労基署に請求できるため、領収書や請求書は大事に保管しておきましょう。
2.申請書に記入し、会社の証明をもらう
続いて、厚生労働省のホームページから労災の申請書をダウンロードし、記入します。
労災の申請書は、管轄の労働基準監督署(労基署)でも手に入れることができます。
厚生労働省:申請書のダウンロードページ
労働基準監督署:管轄の労働基準監督署一覧
厚生労働省のホームページを見るとわかりますが、労災の給付金には「療養(補償)給付」、「休業(補償)給付」、「障害(補償)給付」、「遺族(補償)給付」など、とにかく様々な種類があります。
どの給付を受ければいいのかわからない場合、管轄の労基署に聞いてみるのが一番手っ取り早いでしょう。
申請書の記入が終わったら、会社の証明として申請書に捺印をもらいます。
登録制日雇いバイトの場合、どこで証明をもらえばいいのか?
ちなみに、登録制の日雇いバイトで労災が起こった場合、派遣元の会社と派遣先の会社、どちらに捺印をもらえばいいのか皆さんは分かりますか?
「労災の証明をどこでもらえばいいか」については下記の記事で全部解説してるので、ぜひ参考にしてください。
【日雇い・単発バイト】知っておきたい派遣制度の仕組みについて
3.病院に提出する(労災指定病院の場合)
労災指定病院で治療を受けている場合、自分がかかった病院、医療機関に申請書を提出します。
この申請書が労基署の手にわたり、労基署の審査が終わってのち、給付金が支払われます。
労災指定病院以外の場合は労基署に提出する
労災指定病院ではない場所で治療を受けている場合、既にその病院への支払いは終わっているため、申請書を直接労基署に提出します。
労基署によって状況が審査されたのち、給付金が支払われます。
日雇いバイトも立派な労働者です!
労働災害が発生した場合、たとえ日雇いバイトであっても、正社員と同じ内容の労災保険の給付を受けることができます。
僕も株式会社フルキャストホールディングスで日雇いバイトとして働いていたときは、自分が社会の末端に位置するように思えて、すごく社会的立場が低いように感じました。
しかし、そのような感覚とは関係なく、すべての労働者が労災保険を受ける権利があります。
たとえ会社が労災保険の給付をいやがり、強権的な態度を取ってきたとしても、このような知識を持っていれば、冷静に対処しやすくなります。
労災保険の制度を知らず、「既に健康保険で受診してしまった」などの事態になっても慌てずに。
基本的に後出しでも対応してくれるため、「今更めんどくさいや」とは思わず、しっかり労災保険を申請しましょう。